大正から昭和へ@山種美術館

 以前から日本画材を使った日本画中心の美術館だと思っていたが、
入口から、油彩の小林古径の林檎器や、佐伯祐三のフランスでの油彩が迎え。
まさに大正から昭和にかけても、画家達が様々な技法や題材を
模索していた時期なのかもしれない。

 日本画と洋画 そういう境界線を越えて自由に行き来していた時代だったのかも。
洋画家岸田劉生からの影響だとか。
ちょうど、泉屋博古館分室にて岸田劉生を見たところです。
日本の風土が持つ色合いを油彩で表現した という点に注目したい。

 また速水御舟が、イタリアはローマで開催の日本美術展開催に合わせ
渡欧した時のスケッチを見ると 先の大倉集古館収蔵の日本画コレクションとの
関係も感じ入る。大倉喜七郎横山大観夫妻とともに航路で旅立った時代。
埃及土(エジプト)人の灌漑」は、エジプトの伝統的な手法で人物を描きつつ
母なるナイルの水は、碧色に日本画のような澄んだ水流であるのが興味深い。
海外のスケッチも、しっとりした空気を感じるどこか柔らかな風景になる。
 
 竹内栖鳳班猫」 
宋・徽宗皇帝の猫の再来か、感激した竹内が
沼津の八百屋さんのおかみさんに頼んで譲ってもらったという猫さま
翡翠色の瞳にあのふわりとした毛並みの柔らかさの表現には適うまい。
それが円山四条派と西洋の写実を加味というあたりはまだまだ不勉強。
重要文化財」な理由か。

 洋画から日本画川端龍子の「鳴門」 奥村土牛の「鳴門」とは桁違いに
ダイナミックで、その線を一気呵成に描ききる技量に、屏風全体が渦巻き
動きが感じられる。

良き名品に恵まれた山種美術館は、同じ名品に再会しても、それぞれの展覧会の
構成にあわせて、また表情が変わる。
 掛軸は、保護カバーをかけた上で、かなり至近距離で鑑賞できるように工夫してあり
毎回あの限られた空間を、上手く展示構成してあるのはありがたい事である。