F1疾走するデザイン・わが山河・長井朋子@オペラシティアートギャラリー

 初台の「オペラシティアートギャラリー」というのは、
一枚で三回美味しい展示をしますが、展示に統一感がないとごろも
面白いですね。
ぐるっとパス」で入場できるので、三点の中でどれかを楽しむ
という心意気で行かれるのが、今回の場合はよいかもしれません。
それぞれを堪能しようと真剣になると、すごく支離滅裂な印象が残りそう。

1)F1疾走するデザイン
 ここはメカ好きな人ならたまらなく魅力です。
F1が永遠に息を潜めて存在する会場。デザインをテーマとした国際巡回展
モータースポーツの最高峰である「フォーミュラ・ワン(F1)」の名車がずらり。
クロニカルな展開で 年代と事件と名車が配置されています。
デザインが主眼とはいえ、F1が好きな人にはたまりません。
それぞれの時代の英雄と名車、そのエピソードの紹介もなかなか。

 会場がこんな感じでデザインされるのがいいですね。
展覧会の度に印象が変わるこの会場はとても好感が持てます。

レギュレーションの網の目を潜って様々な努力を重ねての
コスト度外視の スピードと美しさを求めた究極の姿。

Cooper T51
Brabham BT20
Team Lotus Type 77
McLaren-Honda MP4/4
Williams FW14B
B・A・R Honda 006
Ferrari F2005
Renault R25

50年代からのF1の歴史の断片を感じる映像があのF1のエンジン音と一緒に
展開します。
アロンソと一周の映像は、みんながF1ドライバー気分です。
最後には強く美しきエンジン達。
そしてブリジストンのタイヤ達。
シューマッハがレースで走った後のタイヤなんて その走行跡が
ロマンがいっぱい詰まっています。
過去にも、フェラーリ、マラセッティの展示を見た記憶があります。
「ARTEDINAMICA疾走するアート:フェラーリマセラティ」(2002)
美術館と車って良い相性です。

 車と縁のない生活をしているため、カタログ的な英語と数字の羅列に弱いけど、
今回の展示は、「R25」を 実際とパネル分解展示と丁寧な解説があって
よりメカの構造を説明してくれます。映像もあって楽しい。
 メカ好きな人といったら とっても自慢げに熱く語ってくれそう。
そんなデートも素敵だと思うのです。

 アートセンターを出てすぐのgallary5
F1グッズで埋め尽くされていて、本当に少年の心をワクワクさせてくれる仕掛け。
今回の図録はなかなか写真も解説も会場を再現していて 800円
マガジンのようで、見やすくお得。
しかもあの「アイルトン=セナ回想」図録も出ています。
24台の1/43スケールF1モデルカーも 


2)「収蔵品展026 わが山河」 
オペラシティのコレクションより日本画で統一。
 新緑が美しいこの季節に相応しい 日本の自然を中心にとらえた日本画家。
屏風絵など大作による、日本の風景の切り取り方。
成田禎介「渓谷」
また鳥瞰図のよう 一瞬 ジブリ製作かと思うような山の描写
とにかく葉の一枚一枚が重なった樹木がさらに埋め尽くす山並み
その両方から渓流が流れている、まさに鳥の視線からみた山。
そして富士山
吉田博「富士捨景 興津」「富士捨景 船津」
紫紅の富士の情景が素晴らしい 1928年作
川瀬巴水4点
「田子之浦橋」「富士川」「山中湖」「吉田乃雪晴」
富士山麓の陰影をいくつも版と色を重ねた世界は
また巴水ならではの世界で表現される。
雪晴の雪の質感の見事さも見もの。1930-44年
最後には
元田久治 
「Indication」雷門 銀座4丁目
「Revelation」歌舞伎町
どうして このシリーズの終盤を飾ったのか 答えを知りたい。


3)「project N33 長井朋子
「バラも馬に歌にミドリも庭」
 愛らしいクマのぬいぐるみ、人形と
鮮やかな色彩がおもちゃ箱やドールハウスのように
1982年生まれの彼女が生み出す世界は洪水のように
甘い可愛い世界が小さな空間からはみ出す様に展開していく。
最後はシュガーピンクのような甘い締めくくりだった。
 最近このprojectは甘い世界に変貌しつつある。
注目されている ということは 世の中も
「かわいらしい」「少女姓」を探しているのかしら。
日本アート文化が「アニメ」「まんが」といった
今まで「オタク文化」で括れられた世界に
女性側から、別のベクトルによる「かわいい」の発信。

彼女が装丁をした本です。

川かますの夏

川かますの夏