ガレとジャポニズム@サントリー美術館全

 サントリー美術館の空間はガラスを展示するのに
なんとも魅力的な場であった。
 音声ガイドを借りたが、今回の解説は盛りだくさん27番まであり
是非とも聞く価値がある道案内である。

 万国博覧会が 日本の作品がどれだけ西洋を魅了して
インスピレーションを与えたか。
 文明開化という名の下に われも我も西洋文化を吸収することに
重きをおいて、江戸の華やかな文化が一時的に忘れ去れてそうに
なった時期もあった。
 しかし やはり「浮世絵」なり「日本の工芸」の影響力の強さ
そして それを取り入れるうちに、ガレの中で変容を遂げていく
過程を丁寧に描いている。
 ガレの作品と呼応するように、日本の浮世絵、工芸品を配置して
間の前で比較鑑賞できるのは贅沢な試み。

 ガラスそのものの美しさに加えて、自然の写実的に取り入れて
ガラスを美術まで大きく高めた力が素晴らしい。

第1章:コラージュされた日本美術…ジャポニスム全盛の時代
第2章:身を潜めた日本美術…西洋的表現との融合、触れて愛でる感覚
第3章:浸透した日本のこころ…自然への視線、もののあはれ
第4章:ガレと蜻蛉

 階段を降りる先に点るのは「ひとよ茸」
茸の三態を同時に描き 怪しく幻想的な灯火となって迎える。
この花盛のミッドタウンの庭より 灯りを選んだ下さったサントリー美術館

 色ガラスに重ね、多くの自然をガラスを通じて写し取り
蜻蛉のように細く短い人生を提示してくれる。

「蜻蛉」(せいれい)は 白癬流しで有名な母校の校章であったこと
懐かしく思い出した。そのためテーブルで異様な大きさに変貌している蜻蛉には
驚かされるが、彼はひとつのモチーフにいろんな工夫を重ねて ガレならではの
芸術まで高めてしまって、それは既に日本の真似事でなく、
ガレ自身の創造性によって生み出された芸術となっている。

最後の脚付杯のデザインには 二匹の蜻蛉が透き通る姿を見せて重なりあう。
まさ「G」ガレのイニシャルが蜻蛉二デザイン化されているのを観るのも面白い。

人は生きて死ぬ 
その生命の倫理を ガラスによって芸術的に高めた表現をして伝えてくれる。
美しさのみでない、あらゆる視点に好感がもてた展覧会であった。

ガラスという立体ゆえに、写真では味わえない本当の素晴らしさを360度体感してほしい。