国宝 薬師寺展@東京国立博物館

 薬師寺展に行ってきました。聞きしに勝る展示内容でした。
今回は昼夜ともに働く慈悲深い菩薩様が登場。薬師如来がお医者様なら、さしずめ日光・月光菩薩は、看護士さん。白衣の天使ならぬ 銅鋳造の菩薩様です。

薬師寺は、天武天皇が皇后(後の持統天皇)の病気平癒を願って680年に創建を発願し、698年頃完成。
平城遷都にともない718年に現在の地、西ノ京に移されました。天武天皇の愛を受けて無事治癒された皇后は持統天皇となり、平城京線にも共に連れて行かれた 夫婦愛の結晶体です。
 
点数とは少ないとはいえ、大きなアミューズメントパークのごときです。第一章ではスロープが設置されて、それぞれの宝物に合う仕掛けができており、まるで奈良の薬師寺を回るように導線と構成がされています。 寺社巡りは古来より民衆の娯楽でしたが、この春はありがたい事に薬師寺から日光菩薩月光菩薩がいらっしゃいました。青(緑)と丹色(赤)、黒と大がかりな展示スペースの仕掛けにきっと仏像やお寺巡りの醍醐味が味わえ、薬師寺が好きになると思います。
 平成館のエスカレーターを上ると目前は桜の大木です。良い時期に行けば、桜の見事なお出迎えを受けます。

第一章 
 まずは神様 八幡様です。
休ヶ岡八幡宮には僧侶の形をした八幡様も鎮座しています。
社殿には狛犬、そこらで見かける狛犬とは違いますので、ご注目です。
 社殿を模した背景に三神坐像が鎮座し、壁絵が飾られている様は見事。今はレプリカでも雰囲気を十分出せて八幡宮を疑似体験ができます。
 なお本物はケースに収めされてじっくり見られるように。そうでない人は上部の壁面パネルで鑑賞できます。

 次は薬師寺 お寺コース
薬師寺水煙はレプリカとはいえ、こんな近くで見れるとは感激です。いつも地上から眺めているだけでしたので。天女が自由にあらゆる方向に自由に舞い踊っています。
「すいえんの あまつおとめがころもでの ひまにもすめる あきのそらかな」(會津八一
「逝く秋の 大和の国の薬師寺の 塔の上なる ひとひらの雲)(佐々木信綱)
 あまりにも有名な和歌を想起する水煙です。

 聖観音菩薩立像は、均整とれた肢体の青年像のようです。今回は光が本当に繊細に柔らかにライトアップされていて、穏やかな表情を見ることが出来ます。そして更に壇上へと上がっています。
あの展覧会場に高低さを導入する試みは大変面白くドラマチックな展開を予想させます。

まさに今回のアイドルが二人。
まず壇上にてお二人を比べあうのも良いでしょうが、是非降りられて間近にてお二人を側面からと背面から見る贅沢を味わうと良いでしょう。
 光背がなくても十分な存在感と丁寧に造り。背中のラインや腰つきも 整った細やかな御髪の様。衣文も軽やかにたなびく如くです。多くの大火震災に逢ったにも関わらず、衣がほつれた程度で全身を今なお美しく保っています。
中は空洞とはいえ、2トンの重さだそうです。 月光2トン 日光2.3トン その差を側面から少し感じることが出来ます。日光菩薩は、まさか身重ではないでしょうが、下腹がどんと構えて安定感があります。それに比べて月光は背中もすっきりと柳腰になっています。
鋭い目元と高い鼻筋とおったお顔はさすが大陸からきた文化を感じます。
 力強い温かさを持つ豊かな肉体を表現しながら、同時に深い思索性も秘めた完成度の高いものでした。グプタ朝印度仏像を思わせますが、衣や控えめな表情などは、やはり日本に来て柔かく表現されているとか。
 [月光菩薩展 : 奈良薬師寺金堂復興祈願 : 毎日新聞創刊百年記念」として昭和46年4月20日-5月2日   
日本橋三越本店に月光菩薩が単身で上京されたそうです。

第二章
藤原京薬師寺跡からの出土品で占め、考古学的には興味深いでしょう。三彩多嘴壷(たしこ)三彩はユニークな文様。シルクロードを経た文化を感じるお顔もあります。

第三章 玄奘三蔵と慈恩大師
玄奘三蔵坐像のききりとした顔、掛け軸の絵に似せ経典を手にしています。
慈恩大師のききりとした眉。解説で「満月のようなお顔、どんぐり眼、つりあがった眉」なんとも愛らしい表現ですが、偉大なる慈恩大師様という感じです。
 
第四章 吉祥店図
 吉祥天は保存のため、かなり照明を落とし、かつ会場の奥にあります。その手前にある大型パネルや映像で鑑賞するのが一番ですが、是非 本物では麻布に麗しい宝珠と唇に載せた朱色の美しさを金飾りを、衣文の繊細丁寧な描きこみを味わってください。混雑している場合はとても見辛いかもしれませんね。

 なお音声ガイドは市原悦子さん。しっとり温和な語りでふっくら顔が、天平美人・吉祥天に似ていませんか。(日本昔ばなしも好きでしたし)
薬師寺の声明「称名悔過」もお聞きください。
 そして運良く薬師寺さんの解説が聞けたら、楽しいことでしょう。トーク上手ですから♪

 奈良県では、平城遷都1300年祭を祝うべく奈良がいろんな企画を立てて盛り上げようとしています。「あをによし鹿男

しかりその中で、あのマスコットキャラクターに関する愛称応募はひと騒動がありました。話題性は戦略的なのか。

「あをによし寧楽(なら)の京師(みやこ)は咲く花の薫(にほ)ふがごとく今盛りなり」(万葉集:328番歌)
 日光菩薩月光菩薩様のご加護により、病がちな人は少しでも良くなりますように。