上村淳之展@日本橋三越

 私が初めて購入した絵がこの上村淳之氏の「時鳥」
とはいえ 複製リトグラフであるが。

銀色に輝く月光を見上げる柏木に佇む時鳥。
時間を永遠に静謐に留めている画面が好きだった。

上村淳之氏は
「自然の譜・四季に遊ぶ」
「美の流れ三代 松園・松篁・淳之展」など
数多くの展覧会があらゆるデパートで開催されており
今回は、パリエトワール三越で成功を収めた報告も兼ねた
展覧会である。
 やはり日本人が好む四季花鳥図と共に、
余白が本当に静謐な美を生み出すよう。

 今回1991年の作品を改めて観ると本物はやはり違う
複製画という偽物は同じようであっても違うもの
いくらインターネットで作品を画像で紹介したり
拡大できる高画質がパソコンの液晶で再現されようが、
やはり 本物に対峙する美に迫力には及ばない。

 「時鳥(no.19)」は、青蓮院門跡に所蔵されている
襖に描かれた「銀色に輝く月光を見上げる柏木に佇む時鳥」
そのテーマが緑色を排した事でいっそう襖に際立つ絵となった。
この作品を観ただけで私は 来た甲斐があった。


 最新の「四季花鳥図(no.36」(2007)は
以前に較べて華やぎ賑やか。まるでパリ行きを知ってか
鮮やかさ賑やかさが増しているよう。
雪を戴いた松、梅、山桜、栗、楓、再び雪景色の椿
少し前に描いた「四季花鳥図(no.18)」と比較しても。

 奈良県立図書館にも同じモティーフの四季花鳥図があり

こちらでは、鳥たちの説明まで細やかで親切。
一度本物を観にいきたいと思う。

ちなみにフランス人が好きな絵は「雁金(no.8)」(1988)

対の雁金が銀月を背景にして並んで飛び行く姿のみを描いた一枚は
まさに「作品の余白に万物の息吹を感じる」

デパートでは手堅い作家であろうが、
あの時の私も複製でも良いから そばに一枚いてほしかったのかも。