池田満寿夫 知られざる全貌展@オペラシティアートギャラリー

 日本人としていち早くアメリカ ニューヨーク近代美術館で認められて活躍し、
エーゲ海に捧ぐ」で芥川賞を受賞し、タレントとしても活躍した生き方。
太く熱い生き方と思う。没後10年

今回の展覧会のために新たに発見された版画や資料の存在ゆえに
「知られざる全貌」となっている。
 特に陶芸と版画に脚光を浴びせている。

エントランスで出迎えるのは、晩年に池田氏の情熱を傾けた
陶芸の作品群が迎える。
 晩年の陶芸「満寿夫八方窯」など野焼など挑戦的な陶芸に試み
版画以上に情熱をもって取り組んだという。

 そして「天女乱舞」
 贅沢な西陣織の帯、打掛を用いた作品。
国会図書館新館の「天の岩戸」の大作には及ばないものの
しかし間近に日本着物の最高の作品が、池田流に配置されてボードに
留められた作品。そこに日本女性が存在するように艶やか。

版画ではあらゆる技法を駆使して池田氏ならではの鮮やかな切り口
アクアチント、エッチング、ビュラン、ドライポイント、ルーレット
ソフトグランド
(版画の技法解説は詳しくはコチラ


一枚の画面に様々な技法を組み合わせている。
線と色、形がそれぞれ画面で刺激的な関係で収まっている。
「Women in Vogue」
「Rose is Rose」
マイケル=デイビスのジャケットに使われたという
「something 1958miles」も。

 文部大臣賞や東京都知事賞を受賞した抽象画は
すごいんだが、今の私にはまだ受容できない作品だった。
 でも「太陽の女」で審査員久保貞次郎を唸らせて推薦させて実力。
詩人・富岡多恵子との生活で拡がる多彩な芸術家との交流
ニューヨーク近代美術館リーバーマンに見入られ、日本人として初めての
個展を1965年に実現された才能。
円熟期にミューズとなって多くを与えた佐藤陽子
女性は古典美術に学び、古典美術を通じながら変容していく魅力。
「陽光のように」は佐藤陽子さんの魅力が輝くばかりに光放たれる。

 最後は「心経陶片」
仏説摩訶般若波羅蜜多心経
 「蜜」が「密」で彫られているが、良寛も同じように間違っていたと
池田氏は全て「密」
しかし陶片で「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」を一字一字を並べて配置。
地蔵群とともに書と「宗達賛歌」とあるように日本文化に
回帰し日本本来の美に向かっていったのか。

 会場の年譜には
カツギ屋として活躍、東京国立博物館で仏像を見て感銘を受けるとか
東京芸術大学に3回不合格 になるとか、なんだかエピソードを取り入れていて
面白い企画の立て方とも思った。
 それぞれの作品に出来る限り細やかな解説が付されているので、
初めて出会う池田満寿夫であったとしても、その多彩ぶりを断片的に知り、
会場を回り終わる頃には、その人生を追悼できるのではないかと思われる。