北斎展@江戸東京博物館

http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/page/2007/1204/200712.html
オランダ国立民族博物館、フランス国立図書館からの肉筆画が多く里帰り展覧会となる。
葛飾北斎の里帰り展覧会で、名古屋と山口に巡回展覧会
Great Hokusaiが海外に広く所蔵されているのも凄いが今回多くの研究者を驚かせるような「新たな北斎」と言わしめる作品が多く秘蔵されていたのも珍しい。

 2005年に東京国立博物館でも大規模な北斎展が開催されたが、
今回は西洋画的な手法で日本風物を描く肉筆がの大変ユニークな試み。

◆NikkeiBPにて気になった記事
北斎シーボルトの交流、そして新発見の屏風」名古屋市美術館 学芸課長 神谷浩氏
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/2007121

 しかしオランダとの関わり ケチと世界的に有名なオランダ人らしい(ex..go to Dutch)
北斎に絵巻物を依頼しておきながら支払いの段階でごねるとは・・
その医者はもしかして シーボルト!?という疑惑も面白いかも。
 フォラー氏の研究論文が興味深い。丁寧にオランダ国立民族博物館、フランス国立図書館を調べ、今回の展覧会第一部を実現された。
 オランダ紙を使っているとか。しかも粗悪なオランダ紙には和紙で裏打ちして使用しているなど、さすがの配慮と感じた。
 
 北斎の画法や手法など素晴らしい研究者が多くまた執筆しているので、このブログごときで言うことは何もない。

 しかし「新たな発見」というのではなく、再評価というべきであって従来の北斎像と違っても驚くにはあたらない。
何故なら天才的な画狂であり西洋の絵の具(ベロ青)と共に、西洋画法も入ってきていたはずで、絵の具や画法について熱心であり天才的な画力をもっていたのだから。
 江戸時代は鎖国とはいえ、大変豊かな博物学の影響が多く入ってきており大変豊かな文化の時代であったのだ。

◆私が気に入ったもの
10 驟雨... 暗雲、雷鳴の表現がより実写的に
17 花魁と禿... 図形的に計算尽くされている 三点画法と渦巻きのような着物

フランス国立図書館所蔵でちょっと許せないもの
→39 素麺作り..なぜかこの一枚のみ画中央に所蔵印がある。デリカシーがない職員の仕業か

46 西瓜の陸揚げ...西瓜が魅力的 
56 海女...ヴィーナスと思うような海女達だが、鮑や波が奇怪というか艶かしい。

 第二部は「北斎といえば」という内容である。
【版画】
 有名すぎてコメントを控えたいが、今回複数借受して前期後期通しで見れる配慮が心憎い。
図録では両者を比較が出来、摺りの違いが写真ではあるが堪能できる。

【摺物】気に入ったのはオランダ国立民俗博物館の所蔵であった。
179-182 四性ノ内 
183-185 元禄歌仙貝合
どれも空刷りで文様や波を丁寧に表現しており大変贅沢な色彩といい刷りといい素晴らしいと思う。

【肉筆画】北斎の中で魅力的に感じ入るのはやはり肉筆。個人蔵をかなり集めている。
とりわけ
188 美人夏姿図
190 夏の朝 
...美人の体の線が上手いんですね。着物ゆえに一層色っぽい。長襦袢の緋色が透けて
なんて艶っぽいのでしょう。
前述の神谷氏が「まさに神業というか……。この美人は僕の恋人といっていいぐらいの作品」と
愛する理由も納得。

203 竹林の虎図
...不謹慎ですが「明日のジョー」の力石徹に目が似ている と。
江戸時代よく見た猫っぽさはなく、ちょっと人間臭さ感じてしまうのは何故?

210 雪中鷲図
...かなりの存在感を感じる。173天空を舞う「鷹図団扇絵」も迫力である。

【版本】
 オランダ国立民族博物館の所蔵の充実ははシーボルト氏の力とはいえ、かなり海外に持って行かれている。
しかし江戸市中では愛読されてボロボロになっていたであろうと思うと 大事にオランダの地で保管されて幸いである。
画面はみ出るまでの迫力がある画、光線など効果線を駆使してなんとも魅力的な本をかなり作られている。
228-229 踊独稽古 
YouTubeや それ以前のvideoもない時代に「踊り」という記録が難しい動きをよくぞ描き留めたと その技量に驚くばかり。

 常設展では「北斎漫画展」も開催している。「北斎漫画」は世界に誇る日本文化の結晶のひとつであろう。
Great Hokusai と称号されるに相応しい画業に生きた 卍画狂人 
観て満足、今回こそはと図録を購入することにした。
 山口萩、名古屋のみ展示の作品もあり、三会場それぞれに比較するのも面白いかもしれない。