乾山の芸術と光琳(後期)@出光美術館

乾山の芸術と光琳 前期@出光美術館

 焼き物といえば乾山焼が有名であるが
鳴滝時代の出土品から、出光美術館内外の乾山の作品を
一挙に集結しての贅沢な鑑賞する機会。比較する楽しみを提供してくれる。

 ここ数年の出光美術館は、「雷神風神図屏風」を
宗達光琳、抱一の三点三時代を比較するというユニークな展覧会を企画し
新しい魅力を提供し続けている。
 鑑賞後のお茶サービスと眺望の良さと静けさが好きで
都会の隠れ家のような美術館であったが、リニューアルして一層
繁盛する美術館へと変貌している。

 鳴滝窯跡出土遺物が何点が完全品とそばに並べてあるのも大変面白い。
 江戸期という遠くではない時代でも廃れた窯元を発掘調査されて
更に真相が明らかになった今回の展覧会は、所蔵品のみならず
充実した内容となっている。

異国趣味では中国、ベトナム、オランダを模倣し模索する姿が。
色絵石垣文角皿は、モザイクのように多角形を配置しては
乾山ならではの色彩で取り込んでいる。

乾山焼
◆色絵竜田川文透彫反鉢
 龍田川の流文の合間から紅葉が配される。波の曲面
桜花は白彩を盛り上げて、大変見事に立体的な花を散らす。
二種類出品されており、比較するのも面白い。

◆色絵芦雁文透彫反鉢
 金泥の雁、銹絵の芦 その風景を反鉢の収めつつ、器には
大胆に穴を開ける事で、奥行ならぬ 更に先の風景までも
想像させる大変面白い形。器の常識を超えている。

◆銹絵染付掻落葦鶴文蓋茶碗
 蓋も椀の中も徹底して計算尽くされたように見事な意匠。
葦が群生する川面を、鶴も全身でなく一部を描く事で、
器に収まらない空間世界を想像させる。

 こうしてみると、渋味滋味を感じる鉄由来の銹絵で
葦と鶴を描く図がとても気に入っている。
色彩豊かな紅葉文など形の面白さを競うような香合も良いが
このような銹絵で描く各皿が一番魅力を引き立てると感じる。

 やはり、兄弟合作の場面が一番面白い。
 才気ある二人が作り出すものは当時を魅了し、
時代を超えても「琳派」というカテゴリーで愛されて
今なお新鮮な印象を与えるデザインとして魅了し続けている。
 光琳がプロデューサー、乾山がデザイナーとして
大いに魅了した事であろう。才気あれば何かと大変であろうが、
そういう形で共同制作を味わう機会も素晴らしいものである。

 MIHO MUSEUMの 「美し 〜うまし・うるわし〜乾山・四季彩菜」は、
器と料理の調和が見事。
乾山の器は実用より寿ぐ場を盛り上げる調度品として存在感があるが、
ご馳走を盛ると更に器も料理も引き立ち見事。
乾山の文様と食材を組み合わせが凝っていて、うっとりする。


後期出品
◇鳴滝時代 琳派的造形への展開
◆「葛図香包」
 葛葉の意匠も青と緑、そして黄みがありアールヌーヴォー文様が
西洋で繁栄した元になったのかと思うくらい、色彩配置が良い。
御香がミュージアムショップで販売していた。
◆「薊図・露草図団扇」
 アザミも良し。今回は流曲に露草の葉が沿うように配され見事な意匠
◆「百合図・燕子花図団扇」
 百合も良し。やはり琳派は燕子花の藍色が良いと思う。

光琳と乾山 兄弟の合作
◆竹梅図屏風
金地に縦にまっすぐ伸びゆく竹と、光琳らしい梅を配置する。

◇入谷時代 晩年の乾山
◆花籠図
桔梗、菊、薄を投げ入れる花篭。着物の文様で見たことありますが、
繊細に鮮やかに描き込んだ花とは対照に、太く強い墨で籠をざっくり描いている。
琳派らしく流れるように配慮があり、とても素晴らしい。

◆「春柳図」
柳と和歌の配置のバランス

◆「定家詠十二ヶ月和歌花鳥図桜・雉図」
「雪玉集」三条西実隆より
琳派らしい筆さばきも見事。雉を画面に覗かせている。


 2000年からの乾山窯元の発掘調査の成果も踏まえ、
陶片と所蔵品との比較、異国文化の摂取など
大変興味深い展覧会であった。
 「陶片」って あまり興味が湧かないものだったが、
欠片からイマジネーションを湧き起こす鍵みたい。
考古学の人達が一生懸命に土を掘る意味、少し納得。
 欠片となるも、今世紀に完成度の高い器と共に
一緒に展示され幸い。