児玉希望@泉屋博古館分館

児玉希望 ―日本画と写生の世界―

 日本橋小津和紙博物舗で紙漉き体験をさせもらった。
 そのときに小津和紙の歴史と共に特別室に案内されて
人間国宝の和紙を拝見した。 
 2階まで上がる途中に、大きな花鳥図がありそれが
児玉希望の絶筆で未完成だと伺い興味を持っていたところ
今回の展覧会
◇「百花百鳥図」製作中に急逝 昭和46年5月2日逝去。


 玉堂に日本画を学び写生を重ね、油絵を経て、日本画でも
日本画を提案した過程を中心に紹介されていた。

 油絵の中で「湖畔流水」や「松並木」など、
まるで印象派のように大胆に形と空気を捉えて描く様は
意外な一面であった。
「鳴門」も渦を直接描かず、波間の高低に月を配する見事さ。
児玉氏は波の変化がとても好きなのではないかと
思うくらい、今回は波を描いた良品が多く見られる。
 晩年のデッサン類が的確に捉えて上手いのは当然だが、
「富士見台」の紫雲の中にそそり立つ富士の姿が良い。

◆「晩春」
セピア地の背景ゆえに引き立つ淡紅色のツツジ
絹本彩色で鮮やかな色。これが27歳の作とは。
風に舞う桜、波 全てのモチーフに動きがある。 

◆「雨後
29歳の作。雨後のひんやりとした空気が山を包み込み、
雲間からの光が注ぎ込む姿もまた見事。

◆「飛泉淙々」
水飛沫の飛び上がる様。静かな流れながら
緑色が眩い色なのは、玉堂を通じる優しい山あいの色である。

◆新水墨画十二題
『自分は明確に答える これは具象絵画であると』

◆「瀾」
なみ 青い青い曲線の戯れが螺旋を描いては深い藍色となり
赤や緑、青の色がモンドリアンやクレーのように
音楽を奏でる絵画のよう。

◆「枯野
晩秋の高原を一頭の狐がとおり過ぎる荒涼とした情景を描写しています。
「風景は軽井沢で取材し、狐は自宅で飼っていたものを写生した」とのこと
38歳の力作。

◆「仏蘭西山水絵巻」
水墨画の墨の濃淡で仏蘭西の風景を描き、水面の動きも風も描き、
最後に瀑布の先にかかる虹が七色の彩りを輝かせる。
今回が「河」の展示期間でとても幸せだった。

◆「群貝」
 うねるような満ち引きの手前に丁寧に散らした貝づくし。
貝のひとつひとつが宝石のように丁寧に描かれる。フジツボまでも細かい描写。
まるで若冲の貝尽くしにも似通うが、この荒波の飛沫さえも美しい。
全体的に見ると、やっぱり波間を描くのがすきなのだろうか。

 エントランスのソファーに座って 紅葉が光を浴びて色を移ろうのが見える。
六本木の閑静な空間

季節感あふれる色彩豊かな風景画や花鳥画を得意とする。
美人画花鳥画にも秀でているそうなので、また機会を得たい。
また小津和紙に行って眺めてみよう。