肉筆浮世絵のすべて(後期)@出光美術館

実際に筆で描かれた一点もの
江戸期の美人と 着物の艶やかさ華やかさに満ちている作品ばかり

◇春秋美人図 葛飾北斎
着物の細部までこだわりぬく絵筆の見事さに恐れ入る
初公開の「亀と蟹図」「樵夫図」などユーモアある作品も

◇更衣美人図 喜多川歌麿
出光美術館の看板娘になっている作品。
絽に透けみえる長襦袢の色合い組み合わせといい、
足元にしどけなく置かれる着物が彼女を包み込んで
色っぽさも一層感じられる

◇美人鑑賞図 勝川春章
美人が掛け軸を堪能鑑賞する図を私達が鑑賞するという
入れ子式に仕掛けた見事な構成
美人達の表情も艶っぽいが、着物がまた
黒や藍色など粋な取り合わせで、満足×満足

隅田川舟遊・雪見酒宴図屏風 歌川国久
「川一屋」さんの舟遊びでの艶やかな遊女と旦那衆の乗る
屋根に乗っている親父さんの顔が強烈に面白い。
雪見酒宴図では二階で腕相撲している姿も
 いろんな空間を見せてくれる効果が興味深い

浄瑠璃芝居看板絵屏風 無款(伝菱川師宣
舞台内容の看板のはずだが、人間の身体が輪切りになったり
血が飛び散っていたり、なかなか想像逞しい絵
あまりにシュールなすぎる絵なので(すみませんが)笑える

◇風前美人図 懐月堂度秀
絵に風が吹き入れたように裾や袂の動きがお見事

◇藤娘に念仏鬼図 窪俊満
山東京伝
「咲緑の蔓にまかれては 鬼接骨艸も角かくし
 塗笠の紐に結れては 鬼印華布も色を失ひ・・
 金をつかふて痴になる」
すっかり恋にのぼせた鬼の姿が愛らしいすぎ
「一角仙人」にも似ていて 惚れるとこうも愚かになるか

◇桜下美人図 水野盧朝
派手派手「さくらん」の色彩感覚に近い程
緑色にショッキングピンクのような紅色 目をひく色彩

無款で見事な作品も多く
人形遣い 
画面にまではみ出て動きが感じられる愛らしい人形と美人

海浜美人図 歌川豊国
海浜を背景にした美人が一人。
これを見た瞬間にトラックに描かれた
ヤンキー兄のアイドルを想像してしまった。
ちょっとCGチックな背景と美人を強引に結びつけている効果的な一枚

◇役者夏之夜図 歌川国芳
 しっかり遠近法で、人物に影を付けて立体感のある絵になってきている。
しっかり役者を判別できる程、豪華な揃いものである。

◇遊女と禿図
 今期は数点出ており、伝懐月堂安度、奥村利信、そして酒井抱一
それぞれの遊女美人図がまた贅沢に素晴らしい。

 出光美術館は肉筆浮世絵を多く収蔵しており、
「肉筆浮世絵のすべて」と名うてる程の所蔵数で、
江戸の肉筆浮世絵を俯瞰するにも素晴らしく恵まれています。
美人ばかりを堪能して、すっかり贅沢で満足感のある展覧会です。
これを収集した出光さんは偉いお方であることよ。

「美人のつくりかた-石版から始まる広告ポスター」@印刷博物館
行きたかったですね。やっぱり美人に弱い私。