アートで候。会田誠 山口晃展@上野の森美術館
栗の花の香りと寺の鐘の音 上野の夜は静かで暗い
「アートで候。会田誠 山口晃展」
二人の大作はやはり眼の前にしなくては体験出来ない芸術。
お二人の初期作品がエントランスを迎えてくれて
◇山口晃「洞窟の頼朝」(1990)
本人にも似ている気がするが気のせいか、しかしこの頼朝がここから
連作へと発展していく萌芽期。
◆会田誠 セルフポートレート「潮風の少女」(1989)
やられてしまった。いきなり! しかしこの次の会田誠大作三連発がでかい。
◆会田誠「大山椒魚」(2003)
Courtesy of Mizuma Art Gallery
美しい日本のシンボルのような絶滅危惧種の天然記念物と美少女
私としてはお尻が好き。
青海波の文様を背景にしてこれが山口氏「四天王廣目天」の裏地と同じだ
と意外な共通点を発見した。
◆会田誠「ジューサーミキサー」
4mもの高さでネットの小さな画像では全く予想もできない・・
遠くでみると黒い粒粒が入った薄桃色が赤くなるジューサー
アングルの「トルコ風呂」みたいに肌色でぎゅうぎゅう詰めになっている。
表情も肢体も上から順番に視線を下ろしてみる。
女の子が見たらどう思うか聞いてみたい。
純真無垢なようで怖がりやのようで
実はホラーとかスプラッターとか好きだったりする。真っ赤な血にも慣れっこである。
そういう発想と大作へ実現した精力に物凄い力を感じる。
確かに横浜トリエンナーレ以来登場しない理由がわからなくもないが、
ガツンと世の中に問いてみた会田氏に勇気があると思う。
高橋龍太郎氏コレクションは素晴らしい、そして羨ましい。4mの作品を
購入かつ保管できるコレクターなのだから。スケールが違う。
◆会田誠「滝の絵」
これは図像学で見ても考えられなくもないが、
とにかくセーラー服とスクール水着。名札付きである。
この名前が結構遊んでいて 青山から、深淵まで
日本人でなければ堪能できないし、これを楽しむ事はないでしょう。
こう大人への変貌を遂げる変化途中の過程を描くのは、
なかなか厳しい世の中なので 一見純真無垢で健全清らかな少女達の姿が
こうも愛らしく描かれるのはやられた と思った。
◇山口晃「当世おばか合戦」
じっくり見ても見ても楽しいですが、中央の「むきゅう」な顔と
ギャルに注目。絵師はどこでも隅から隅まで遊び尽くし描き尽くし。
◇山口晃「四天王像」
Courtesy of Mizuma Art Gallery
ミヅマギャラリー「ラグランジュジュポイント」
モノクロの「多聞天」蒼い「持国天」土色の「増長天」 そして「廣目天」
ミヅマとは配置が違っていて以前と印象が変わる。ちょっと残念かな。
でもオーラに満ちている空間。
◇山口晃「LIFE IN DOWNTOWN」
槇原敬之ののジャケット原画も楽しめますね。
見れば見るほど発見があって一度では見尽くせない楽しさがあるのは
昔の安野光雅「旅の絵本」に通じるところがある。
人物も建物や風景、小物ですらもそれぞれに意味あり訳ありもので、
そういった探し物は永遠に夢中になれる事ではないか。
◇山口晃『山愚痴屋澱エンナーレ2007』11「解読」
山口氏得意技「見立て」の面白さがダントツ 私の個人的ヒット!
繊細緻密な筆致を土台にシニカルな洒落っ気が好き。
「髭男爵タタミでうたた寝」これからそう見えてしまいそう。
・・・・・・・・・
山口氏のその正確さ緻密さの上にたったシニカルな遊びココロは、
三越百貨店も東京大学も、ドナルド=キーン氏も魅了しています。
原画でもあの徹底した緻密さは驚きです。
しかし展覧会を企画した産経新聞は太っ腹です。
izaでのこまめなblog 新聞社なのに情報発信だけでなく双方向情報アクセス網。
そして何より会田氏の「にゅうようくくうばくのず」では日本経済新聞が使われているし
山口氏の「私と20世紀のクロニクル」挿絵は読売新聞発表のものなのに、
堂々と出している懐の広さ、テレビ番組でライバル企業が出るからスポンサー降りる
某企業とは違いますね(笑)
そして、こんな素敵な展覧会のプレビューに参加させて頂き感謝です。
本当に有難うございました。
気になるのは開催日当日夜だったのにどうして「pre-view」なのか気になりますが、
愚問ですね。
何しろ開催中もまだ作品製作が続くのも興味深い所ですので、何度行っても
驚きがあるかもしれません。
今回残念に思ったのは、日本橋三越の展覧会でさえ展示されていた
「菊燈台」〈澁澤龍彦 ホラー・ドラコニア 少女小説集成 第弐巻〉・・・
会田誠さんとコラボならば、なお一層今回の展覧会で原画を登場させて欲しかったですね。
「日清日露戦役擬畫」の緻密な筆致も堪能したかったですね。
なかなか作品全てとはいかず、今回の目玉はやはりお二方の鮮度溢れる新作発表に
重きを置いているようです。
お二人とも犯罪者です。会田氏の覗き魔、山口氏は窃盗犯
でも美術の世界では、確かな画力構成力ゆえにそれがらプラスになったパワーとなり
昇華されるのだから、日本もココ世の中もスゴイです。
日本画とかいう既成観念を壊し裏切り続けて、新たな境地を提案して下さい。
日本を代表する作家になると確信します。
本会場ゆえの制約ですが、2階からも4mの大作が眺められたら
また鑑賞する印象も変わることでしょう。
大作が大きくドンとあるせいか、壁の白さが引き立っていました。
ダリがこれでもか!という位張り巡らされていた反動かもしれませんが。
二人とも肉感的な熟女ではなく、純真無垢でどこか中性的でもある女性ですね。
時代の世相として、どう感じられるか。絵郎(エロ)と言われるお二人は
きれいな奥様がいらっしゃるのですから、健全な生き方をしている画家でしょう。
これを好きになる若者がどうか児ポで留まらず、犯罪に染まる事なく
健全に生きてほしいです。
混雑必至のこの美術館で緻密な画は人垣が出来そうですね。
持ち物は望遠鏡(会田氏用)&拡大鏡(山口氏用)でしょうか?!
しかしながら 是非とも ナマの大きさを体感して下さい。