杉本博司 ハダカから被服へ @原美術館

杉本博司 ハダカから被服へ @原美術館

2012年3月31日ー7月1日 
品川・原美術館

モノクローム
本日は原美術館日和。
ウィットに富む杉本調、深艶なモノクローム。平成の洒落本「秘すれば花」幾重にも「被すれば華」業界へのアイロニー

ジオラマや蝋人形シリーズ。1994年に撮影したジオラマで人類の進化と被服の関係を解説する。いちじくの葉の変容を追っていく。衣装とは本来は人間の第二の皮膚のように纏うために作られたはずなのに、ここではマネキンや人形がまとってアート作品として見るという不思議な関係。 その本質が引き立つのは、色彩と糸が纏わりつく洪水のような虚飾の世界観をモノクロームのフィルターに掛けたためだろうか。
装うことの意味を問いかける。人間が裸になる時は、入浴の時と子孫繁栄の時だけ。人は子孫繁栄の時を得るために、衣装を纏うというアイロニカルな文脈。

ギャラリー1では杉本氏のコレクション。ジャック・ゴーティエ・ダゴディの女性背筋図が軸装されている。「愛の翼」
ギャラリー2では、2007年に京都服飾文化研究財団の服をマネキンに着せたモノクローム写真。デザイナーのそれぞれ特徴的なデザインを紹介していながら、その業界の舞台裏までも言及する。
ギャラリー4では、2011年8月公演「杉本文楽曽根崎心中」舞台のお初の衣装。アボリジニの意匠をデザインしたエルメスのスカーフを用いた文楽人形の着物。「新にして深、淵にして艶」 その時代世代を超えた組み合わせの妙がとても良い。2011年9月公演「神秘域(かみひそみいき)」の雷紋(いかずきもん)能衣装。
階段、ギャラリー3、5と日本人デザイナーの代表的な衣装デザイン。
大判のゼラチンシルバープリントを見ていると、モノクロームの画面が非常に豊かな色彩を秘めている。その糸から布地の質感と空気、縫製まで非常に鮮明な美しさで迫ってくる。それが杉本博司の写真なのだろうか。
 自身非常にウィットに富んだ解説文で、「ブランド」が牛の尻に押す烙印だった由来から「今では女の尻を熱くする」ときたか。三宅一生のプリーツ・プリーズは若い人はその肌を引き立て、老いては一体化するという考えも成程。川久保怜のドレスを竹筒ドレスと名づけて「銘」まで付ける辺りはさすが….
 「負の定曲率曲線 双曲型の回転面」のアルミニウムのフォルムが非常に美しい。「数学とは脳がまとった衣装である。」そういう解釈もまた美しい。庭の「かえりな垣」のセンスもまた面白いもの。
 杉本博司の扱う世界観はこの原美術館邸宅のほんの一部でしかなく、その深いことは言うまでもない。

アートの起源
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