五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信@江戸東京博物館

五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信@江戸東京博物館

法然上人八百年御忌奉賛 特別展「五百羅漢―増上寺秘蔵の仏画幕末の絵師 狩野一信」
平成23年4月29日(祝)〜 7月3日(日)

「鮮烈な色彩と陰影の濃さで強烈な印象を与える」江戸東京博物館が語る。

数年前 美術手帖「一夜漬け日本美術史」で見た時はエグイと思っていたが、
実際見るとその圧倒的な描きに魅了される。これは実物しか真実は語らぬ。ナマ見を。
美術手帖 2009年 06月号 [雑誌]
羅漢応援団結成される!

今回の芸術新潮が相変わらず巧いネーミングで語る。
芸術新潮 2011年 05月号 [雑誌]
赤瀬川氏が「モツの煮込み」と譬える
山下裕二教授のおもしろい話。例えが巧い。
妙に納得する解説、「ビーム」「朝から生テレビ」。羅漢病院、羅漢動物園
羅漢様の功徳を親しみやすい言葉に言い換えて、どんどん引き寄せる。
山下裕二氏が五百羅漢図のみどころをたっぷり解説!!

五百羅漢図百幅の様子 
■1-10 羅漢の日常
着物の衣紋、体毛までみっちり描きこみ 
9-10 「ようこそらかん湯」浴室篇 簾と湯煙を通した羅漢の姿は驚異的な技法。髭剃りなど日常生活までみっちり取材。
■11-20 羅漢学園
12 耳の毛まで描き込み!
15-16《論議》「朝まで生テレビ」と形容する位 白熱する論争
19-20《伏外道》異教徒に布教する羅漢。髑髏の首飾りや巻髪など異教徒表現が不思議
■21-40 羅漢レスキュー地獄から極楽まで六道
21 六道地獄 釜茹で地獄から杖で救済しようとするが罪人が次々上ろうと必死。傍では活き活きしている悪鬼が
22 六道 《阿鼻地獄》一番メディアにも紹介されているのが、山下先生はコレが気に入っているよう。
   この吹きすさぶ風の威力!救済の力は
23 六道地獄 氷の刃で血だらけの罪人をビームで救済中
24 六道地獄 針山を登る罪人
25 六道地獄 お椀から水を飲もうとすると火が燃えてなくなる恐ろしい飢餓感
27 六道地獄 地獄に河童も救済を求めて 
29-30 畜生道 鳥類、蟹やカワウソが愛らしくも
■41-50 羅漢修行 《十二頭陀》
46 御簾に影 羅漢図だけでなく地獄絵を参考に 光線を発するのを「ビーム」と解説する。執念深いエネルギーに
48 《但三衣》 糸繰りから洗濯まで  
49-50 西洋絵画のような陰影が不思議(この色彩、山下教授によると金と裏彩色によるのだそう)
■51-60 超能力者
52 顔の皮を剥ぐと不動明王「実は」
53 リアルな表現を追及した成果か 子が哀れ 母もこの姿では哀れであったろう
55 顔の皮を剥ぐと観音「実は」
59 羅漢病院 院長先生が大蛇の口に座って巡回
58 入定を邪魔する鬼
60 お釈迦様ビームで 悪鬼が改心して良い顔している。
■61-70 羅漢動物園、禽獣
61 鹿の耳掃除
63 龍の噴出し
64 火の鳥 カルラ
67 白のガマガエルが。龍もペットに。
70 白澤のお腹に  獅子
■71-74 竜宮城ツアー
71 龍・虎・猪・海老・蓮の葉など思い思いの乗り物で馳せ参じ中
73-74 羅漢さん竜宮城でにこやか。
■75-80 働く羅漢さん
75 産婆さんならぬ 産爺?羅漢様働く。妊婦さんの疲労深刻。
79 建築中 建築材を斜めに配置して非常に立体的な構図
■81-90 七難
81-82《七難 震》大震災後に拝見して一番強く印象づけられた 自然災害の光景。
83-84《七難 風》風のダイナミックな直線
■91-100 羅漢永遠なり
100《四州 北》一信の遺志を遂げた偉業 妻と弟子との最後の一幅



狩野一信「五百羅漢図」 羅漢と動物のあらゆる体毛の驚異的な緻密な毛描きに卒倒しそうだった。
百幅ともなると圧倒的な満腹感。
変化を見せる展示会場、とりわけ「釈迦文殊普賢四天王十大弟子図」成田山新勝寺蔵 
照明も光り輝く効果はココだけの特別仕様。
 この百幅制作には約10年かかっている。1854年から1863年 96幅で一信は亡くなる。
残り4幅を妻妙安と弟子一純が作成し増上寺に奉納 1864年開眼供養したそう。
羅漢堂を造り展示していたが、日本美術史から記憶が薄れてしまう。
 1945年空襲で増上寺は被害。羅漢堂全焼。幸いな事に100幅は現存する。
しかし100幅まとめての全て公開は初めて。2006年など展覧会に散発的に出品はあった。
だから日本美術史に相当詳しい人しか知らない。
 山下先生曰く「実際のこの絵を間近に見れば凄いかわかる」
江戸東京博物館では今回の展示に関連した図書リストを用意している。
そういう資料的にも支えている図書室があるのは頼もしい。
「狩野一信筆五百羅漢図 港区文化財調査報告書 1983年港区教育委員会」が基本資料。

 
 たくさんの人に認知され、この魅力が理解されるきっかけとなるよう。
複製では色がおどろおどろしくグロくみえても、実際に目にしないと全く分からない。
この強烈な魅力は、ドリアンの香りにも似ているか。それとも赤瀬川氏がいうように「モツの煮込み」に似ているか。
 日本美術応援団山下裕二団長は、「現代の日本人美術作家」と「伝統ある日本美術」を掘り起こし、
結びつけ、新しい魅力を引き出す 大きなアートの流れを作ってくれているのかも。Shuffleのみならず。