「写楽 幻の肉筆画」ギリシャに眠る日本美術〜マノスコレクションより@東京都江戸東京博物館

2009年7月4日(土)〜9月6日(日)
東京都江戸東京博物館 1階 展示室
開館時間 午前9時30分〜午後5時30分(土曜日は午後7時30分まで)※入館は閉館の30分前まで
休 館 日 毎週月曜日(ただし7月20日は開館)、7月21日(火)

日本・ギリシャ修好110周年記念特別展「写楽 幻の肉筆画」ギリシャに眠る日本美術〜マノスコレクションより 読売新聞2008年8月4日朝刊一面
 この調査の結果、膨大な数のコレクションの中から、謎の絵師、東洲斎写楽の肉筆画扇面「四代目松本幸四郎加古川本蔵と松本米三郎の小浪」が発見され、調査団により真筆と断定されました。
 ほかにも次々と稀品や珍品が発見されマノスコレクションはついに日の目を見ることとなりました。

 昨年新聞出た時から期待しており、満を期して公開される展覧会。話題作はさりながら、実に見所が多い。マノス氏が作品をギリシャに密やかに仕舞い込み、80年眠り続けた。
 マノス氏はすべての財産を美術収集に費やし美術館で生涯を閉じたとのこと。その調査団には、小林忠学習院大学教授はじめ、出光美術館、大和文華館長、など調査団が美術、浮世絵、工芸と加わったとのこと。
 すべてが初見の作品。たぶんこの機会は二度となく希少価値からも混雑必至の予想あり。最初は屏風だが、あとは浮世絵が多く、絵に張り付て鑑賞したくなる作品ばかり。気合と体力要す。
 話題作より注目作品が多く、以下は図録番号より引用。
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1.狩野山楽「牧馬図屏風」
 屏風は外交官であったハジヴァシリオ氏のコレクションとか。駆け巡る、跳ね飛び、食み、憩い、発情し、嘶き、さまざまな毛色、様態の馬馬馬馬… 緩やかな弧を描くように馬を配し屏風に仕立て。見もの。
2.「韃靼人狩猟図屏風」
韃靼人の衣装文様、馬具の鞍の模様など細密な描き込み。虎登場から格闘、捕獲までの場面。金雲の画面処理も面白い。
9.藤麿「美人画
亀美人か。鼈甲の櫛、簪に黒地に霊亀の仕掛(尻尾の毛が)、亀甲文の帯、ここまで亀尽くし
11―14.奥村政信「遊君×達磨一曲/蝦蟇仙人/一角仙人/鉄拐仙人」
江戸吉原の遊女と、仙人など古典故事の人物との組み合わせ。滑稽を狙い!
19.鳥居清忠「初代市川門之助
傘に真鍮の粉(金色の粉)が施されている。下から見ると本当にキラキラしている。デコ好きは江戸時代もあり。実物必見。
24.佐川近信「初代市川門之助の花売り」
絵師も作品も新出とか。当代きっての美男子若衆方であったそう。なるほど
28.鈴木春信「母と子と猫」 猫よし
29.鈴木春信「見立て菊慈童」 菊の花よし
32.鈴木春重司馬江漢) 「碁」
遠近効果を強調するための碁盤の配置、建物の屋根、向こう側にはコルビュジエもびっくりの近代的な建築物。
春信画とあるが、顔を見れば春信の画風とは違う。さすがは、司馬江漢
33.司馬江漢「三囲之景」 銅板筆彩の眼鏡絵 これを描きたかったのか 31、32を振り返る。

40.歌川豊春「浮画源頼土蜘変化退治図」土蜘蛛、妖怪おもしろし。
43.勝川春草「五代市川団十郎」荒事の団十郎、振り乱す髪が秀逸。
60.喜多川歌麿「歌撰恋之部 深く忍恋」
紅雲母の背景 下から見るとキラキラ。髪型も紫と紅色もよし。
63.喜多川歌麿「山姥 金太郎 髪削ぎ」妖艶なヤマンバママ。金太郎真面目顔だが内心幸せ。
65.喜多川歌麿「風流六玉川」
色鮮やか。紫は植物由来ゆえ(ツユクサ)退色しやすいというが、左から2面「陸奥」の母子、ママの着物は紫が鮮やかに残る。4面「摂津」がまだらに退色するとの比較できる。「近江」「山城」のギャルは愛らしい。
72.東洲斎写楽「四代目松本幸四郎加古川本蔵と松本米三郎の小浪」
肉筆画扇面を特製のアクリルで展示を大きく前面に出し鑑賞に配慮。竹紙ゆえ縦筋が入り金色に輝く。写楽は大首絵だと大胆な構図だが肉筆画は繊細な印象。幸四郎の顔は他の作品から推理して四代目としたとパネル説明もあり。
77−78.魚屋北渓「貝つくし」精密な貝の文様。波には銀を用いる。
81−83.歌川国芳「汐千五番内」縦縞の着物、波に銀を用いる。国芳にしては繊細な
91.歌川豊国「風流てらこや吉書はじめけいこの図」あくびちゃん!
92.歌川豊国「両国花火之図 三まへつゝき」
人それぞれの特徴を丁寧に描き分けている。浮世絵らしい美人揃いだが、中央には真正面のイケメンも登場するが左には見上げる顔があまりにもユニーク!荷を背負った兄さん二人あんまり人間らしくない顔だけど、あり?
93.歌川豊国「新吉原桜之景色 五枚つゞき」
桜の紅、紫色も美しい。花魁と取り巻き、それぞれが交わしあう会話も感じる。左から1面、2面と真ん中にわんこ。
95.歌川豊広「短冊を持つ遊女」白地に紫の萩の文様が美しい。浮世絵の紫色は貴重。
98.菊川英山「当流御庭桜」花見に豆腐田楽? 揃って眉美人。桜色も衣装もそれぞれ色彩も麗しい
100.菊川英山「風流夕涼三美人」影の摺りが見事。着物文様も艶やか。
110−114.葛飾北斎「百物語 しうねん 笑ひはんにや こはだ小平二 お岩さん さらやしき」
展覧会会場では夏らしく北斎で展覧会を〆るように構成したとか。
116.柳川重信「大坂新町ねりもの 水茎の紙 かいでやもも鶴」
楓屋の百鶴が菅原道真に扮する。漆黒の衣装と思いきや、下から見ると鮮やかな文様が浮かび上がる。実物必見。
120.葛飾北為「福原殿舎怪異之図」
大ドクロとドクロ隊が可愛い楽しい絵、平清盛の方が睨み効かせずーっと怖いんだが。
122.歌川国貞「戻横綱逢変化」
画面全体を横断する漆黒の間から、渡辺綱と鬼の睨み合い。画面構成が巧い。

いやオモシロイ。浮世絵オモシロイ。日本美術ブームがあった頃と漫画ブームが世界を席巻している現在と似ているか。
いずれの御時か、漫画原画やフィギィアが里帰り展覧会をする時代が来るやも知れませぬ。

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