犬島アートプロジェクト「精錬所」

 精錬所跡地を100年後に循環型社会モデルのアートプロジェクトとして再生した
なかなか見ごたえのある場。
 精錬所跡をベネッセコーポレーションが買い取り三分一さんと柳さんが共同で新しい循環型社会モデルを提案された。
「在るものを生かし、無いものを作る」(福武總一郎)
「地球上のあらゆる地形はすでに利用可能なエネルギーが存在している」
「建築を通して地球のディテールを考えることに興味がある」


 三分一さん+柳さんのアート(ここは著作権上撮影禁止なので)
公式サイト
もしくは
『新建築』2008年5月号『Casa BRUTUS』2008年7月号
に掲載されている。

 
 1909年には銅の精錬を行う精錬所が建設されたものの、後銅価格の大暴落により,わずか10年でその業務を終えてその場に煙突と煉瓦壁を残したまま時が過ぎた場。
 円形の煙突は当時のままだが、八角形の煙突は落雷を受けた後、台風や地震で崩壊したため、今回のアートプロジェクトには使えなかったそう。

 直島から海を揺られて犬島に到着する。
はるばるきました という感じで黒壁のチケットセンターに入る。
入ってすぐ左は三分一さんのあらゆる地形での作品の模型とパネルが出ている。

 アートな島に生まれ変わるまで90年眠っていた犬島。直島から予約がいっぱいらしい。
チケットセンターで大きなシールを貼ってもらい、ツアーガイドの方に引率されていく。とてもキュートで愛らしいガイドさん。
ここの見所は3点
1)煙突を中心とした三分一博志氏の建築
 「環境システム」 
2)近代化産業遺産としてのカラミ煉瓦
3)館内のアートワーク:柳幸典氏
道すがら、カラミ煉瓦といって銅の精製時に出る黒が煉瓦や土を染み付いている。

精錬所の遺構と三分一さんによる建築が繋がっている。
風や太陽光など自然エネルギーを利用した空調が行われている。

 中は空気を吸い込む音、そして洞窟のような暗さ。
柳さんの光の回廊は鏡がまっすぐ先を照らしているようなのに、進んでいくと曲がりくねり、先の行く人が二重にも見えて全く不思議な体験。背後には太陽を、そしてまっすぐまっすぐ進みゆく中で煙突の空気が噴出す音響を聞きながら、進む。

 その先には大きな空間があって、半円型の室内の中に世界が広がる!
ここは三島由紀夫が渋谷区松涛に住んでいた家を移築したものだが、ただ移築しただけではないのが、柳さんのアート。窓から見える風景に格子戸や洗面の陶器、中には引き出しに秩入りの何か、そして湯たんぽまで。居間の床には文字が散りばめられ三島文学の文字が敷き詰められていた。棚にはあらゆる電気用具。そして次の間には障子に三島の文章が真っ赤な血を滴らせるように菊花と共に空間中を埋め尽くし、その障子を開けると「あわせ鏡」全くもって恐ろしいホラー都市伝説のごとき世界。
 そして屋外に出ると、サンガーデンの中に場があり三島由紀夫の「檄」文が金文字で吊るされている。きらめく金なのに内容は非常に三島。
 
 Caféのおばさんは犬島の人。カフェでは扇風機がひたすら回っていて、裏方の空調効果が難しい。
小さい頃はこの辺りは遊び場で海にもカラミ煉瓦が沈んでいるので、海が黒かったとか。オリーブソーダが美味しかった。

 お昼は、岡山祭り寿司で、ママカリや海老など瀬戸内の恵みが収まったお弁当一品のみ。畳の間に上がり頂く。その中にミュージアムショップが併設されており、Casa BRUTUSや新建築。
 良好な花崗岩の産出されるため、掘削後には湖のようになっていた。

ここはピンク色の縞模様が特色。海岸に沿って石がリズミカルに配置されている。ここに座って海を眺める絶品。

犬島ものがたり (福武教育文化叢書)

犬島ものがたり (福武教育文化叢書)

 Kさんは「犬島ものがたり」著者の在本佳子さんとお話をされたそう。
65歳以上約70人のちいさな島。GRACEでも紹介されたらしい。
 ここに来るにはよほど時間に余裕を持って来たい。

 循環型社会それは日本の暮らしでは以前から存在していた姿でもあったはず。その土地の特性のあわせた建築をするのが本来の姿で、三分一さんの試みがすごいのは、既存の建造物をも巻き込んで新しい空気や水の巡回モデルを提案しているところ。オリーブや柑橘類の樹木が力となっていくように。
 これからも進むゆえのプロジェクト。