茶碗の美@静嘉堂文庫美術館

 「茶碗の美」静嘉堂文庫へ初春の散歩に。
二子玉川から歩いて歩いて正門をくぐって上がる坂道
そういう道程を経て対面すると一層際立ちますね。
遠いと思っていた場所ですが、
小さな美術館の中にびっしりと器が並んでいます。
茶碗を引き立てるためか、鼠色の光沢ある布の上に配置されて
中でも見所ある器は四方から鑑賞できるように配されます。

 煌めく星の数々 小さな小さなうつわの内に
星が光を放ち、それが 紫 青 緑 黄 橙 
角度により、色々な光へと変化しては色を放ち
小さな宇宙空間となっていました。
 良い器は四方から鑑賞できるようになりますが、
本当は茶の湯の席上で両手で包んで鑑賞できる機会があったら
なんと幸せなことでしょうね。

 『稲葉天目』の由来が、稲葉家伝来という理由らしくて
三代目将軍家光の乳母春日局
幼少より病弱な家光のために薬絶ちをしていたという。
春日局が病床の席で、薬湯を入れて差し出したが
その心遣いに感じ入りながらも、薬湯は胸に押し流して
結局呑まなかったという。その茶碗だったか定かでないが、
この至宝を春日局に贈るに相応しい恩義があるのであろうか。
御物が時代を経て誰かの手にわたる運命になるが、
このように小さな美術館の小さなガラスケースに収められて
そして、小さな器から人の心を動かすような光を放つ存在という
大きな宇宙さえ想起させる存在に、すっかり恐れ入った。

 今回はガラス越しに眺めるだけなのですが、
海を無事渡り、数寄者の手で愛でられ、戦乱の世を乗り越えて
よくぞここまで無事存在してきた を思うと、
美術館でとても丁寧にそれぞれを管理されているのが
とても贅沢な思いがします。
 だからといって他の茶碗もそれぞれに思いが込められて
そして愛でられて、一同に会するのだから不思議なご縁のようなものです。

 それぞれの時代の茶会の
一期一会の席で、一服の茶が果たした役目を思うと。

 今回は娘と友人と行ったのですが、誘うときに
「虹色に光を放つ茶碗を観にいこう」という表現をしたため
キラキラ光る茶碗と思っていたらしく、
内側に秘めた静かな恒星たちは派手さがなく予想外だったようです
が、それでも会場内の一番!でした。

彼女のベスト6を発表しますと
第6位 (76)赤膚色絵秋草文茶碗
第5位 (80)御本写銹絵富士山図茶碗
..夕陽を浴びた富士にも見えて
第4位 (15)安南鉄絵草文茶碗 
..ベトナムのお茶碗 サラッと描く草文様がキラリ
第3位 (60)瀬戸天目 銘 埋火 
..虹がかかる様
第2位 (59)黒織部茶碗 銘 うたたね 
..虹色に輝く黒釉、鉄絵も味わい
第1位 いわずもがな☆です
   『曜変天目
釉薬による光の変化が彼女の好みのツボのようです。

ちなみに友人の
ベスト1は、玳皮天目
「亀」...鼈甲をも思わせる器でした。

私の好きなものは多すぎて選べません。

(47)大樋飴釉茶碗 銘 雨雲
まさに降りしきる雨 雨粒も感じさせる
なんともしっとりした器です。
(32)御本雲鶴茶碗 銘 あしべ
安宅コレクションで拝見して依頼気になる朝鮮茶碗
内側が見たかったのですけど何が潜んでいる?
(35)絵御本千鳥文筒茶碗
千鳥が茶碗の内から外に向かい飛び立つ様の
愛らしいこと。
(45)黒楽茶碗 銘 彩鳳
黒楽なのに朱色の地 
(80)銹絵染付春草図筒茶碗
乾山らしい春野 器の内側と外が繋がるような意匠

 陶器、磁器はあまり私の関心事ではなかったのですが、
昨年の「安宅英一の眼」(三井記念美術館)で見た器にすっかり魅了されてしまいました。
 誰もが夢中になってしまう掌の内に収まる宇宙空間に
私も魅了されてしまいました。

 土 焼加減 その先にある 土と火の芸術が
静かな光を放つのは不思議な感動でした。
 窯から出てくる瞬間のために陶芸家達の非常な努力を思うとその数多くの焼からでてきて、
今日に残る器の有難さを深く感じ入ります。

 階段の踊り場から眺めると庭園は梅の盛り
紅梅、白梅それぞれの枝ぶりに、芳しき香りを放ち
まさに春の訪れを教えようと空向いて花咲く姿。
ちょうど庭園も斜面に紅白を配置されていて、眺めること
眼下は紅白の色が散らし一面の梅苑
 訪れるならば今は本当に雅に感じる時期ではないでしょうか。

 静嘉堂文庫は車寄せがあるので、そのまま優雅に美術館前までタクシーで
上がるのも良いですし、自然が残された道々に春の訪れを感じながら散策するのも大変良い場所と思いました。

 今の季節はまさに春 自然の生命力を感じる梅の蕾
中に何を秘めているんでしょう。

 さてさて 茶道の道は奥深く...雑誌もこぞって特集を。
「なごみ」08年2月号 
「天目茶碗の美」売れ行き大好評 大人気のようですね。
「pen」08年2月15日号 
「芸術新潮」08年3月号 茶碗・茶室・茶の湯とはなにか
過去にも多く茶の湯特集、茶碗特集はありますが、
それぞれが時代に呼応したように出版されています。
そして「へうげもの」モーニングで連載中ですが、更に第6服が発売予定
なんと「今焼」というプレゼント企画があり、
若手陶芸作家の紹介もされており、気になる作家も出品。
第6服だけ買おうか...迷っている。
こちらは「うつわ」Casa Brutus
単に、私の視界が茶の湯モードかもしれませんね。