花*Flower*華 -琳派から現代へ- @山種美術館

「花*Flower*華 -琳派から現代へ-」
4/22-6/18
山種美術館 

今回は主催者の許可を得て特別撮影と掲載可能な作品のみを画像で紹介する。
この展覧会では渡辺省亭《牡丹に蝶図》を除き、すべて山種美術館所蔵の作品で構成されている。

 全体を日本の四季 春夏秋冬に合せて花を咲かせていく。
基本的には日本画中心ではあるものが梅原龍三郎《バラと蜜柑》など鮮やかな油絵も並ぶ。 
 また山種美術館のために仕立てた屏風も見るべきものがある。
村松篁《日本の花・日本の鳥》と加山又造《華扇屏風》。伝統芸術の扇面という手法を使いながら、それぞれ得意の花鳥図を配置する。

小林古径《鉢花》
古伊万里など骨董品も愛した古径は大好きな器と花を組み合わせて描くことが巧い。線描きも美しく器の前ですらりとしたチューリップが凛々しく美しい。
また奥村土牛木蓮》の深みある花弁の色合いもぜひ間近で見て頂きたい。

(左)小林古径《鉢花》、(右)奥村土牛木蓮

隣に小倉遊亀《憶昔》は古径先生愛用の古九谷の徳利に鮮やかな黄色の山吹を添えた敬愛の図がある。

小茂田青樹の「写生帖」。隣は速水御舟の写生。花の間にこまねずみの子供を描いていて愛らしくて。

山種美術館の桜といえば、奥村土牛《醍醐》。古径先生の七回忌の帰りに観た京都の醍醐寺三宝院の桜と塀を印象に残したもの。
山崎館長の館内説明によれば、もともと下絵では上部全面を桜が埋め尽くしていたが左右をトリミングして現在の図となったそう。また、醍醐の桜で描かれたこの淡いピンクは、今ではあまり使われなくなった綿臙脂という絵具と胡粉をを薄く溶いて丁寧に何度も塗り重ねたという。

(左)奥村土牛《醍醐》、(右)山口華楊《芍薬

紫陽花も雨露にあわせ変化するが画風によっても色変化していく。
高山辰雄《緑の影》幻想的な緑色の中にトルソーのような紫陽花。
山口逢春《梅雨晴》梅雨を受けて幸せそうな紫陽花が光を受けて輝く様子が見える。これは昭和41年7月茅場町での山種美術館開館を祝って描かれた作品だという。作家の想いも感じられる逸品。

秋の風情が感じられる酒井抱一。菊とルリビタキ
木村武山の秋草の線の美しく重なる様が良い感じ。
山種美術館 顧問山下裕二先生によれば、木村武山は明治から昭和初期と日本画の近代化に努めた一人として、もっと注目されて良い作家とのこと。

(左)酒井抱一《菊小禽図》、(右)木村武山《秋色》

酒井抱一《月梅図》今回修復を行ったものでより鮮やかな金泥によって浮き出た満月に白梅が重なる幻想的な掛軸。今回特別に来場者による撮影が許可されている

酒井抱一《月梅図》
今回来場者の撮影許可がこの逸品。梅の枝を交わす曲線美。修復を経て登場。じっくり目に焼き付けて!実物に勝るものはなし。

第二会場は牡丹の間。とりわけ鈴木其一と渡辺省亭の牡丹図は秀逸。
其一は平坦に塗り込める花が多いが、この牡丹は花弁も葉脈も立体感を持って丁寧に彩色されている。本美術館での研究で、中国の趙昌の作品と構図配色がまったく同じことが判明した。とりわけ左で真赤な牡丹には注目。
省亭は最近加島美術でもお目見えした逸品。牡丹の一生を描くように左上から散りゆく雄蕊をひとつひとつ丁寧に描いている。その瞬間を画面に閉じ込めているのも見事。花盛りに蝶が留まる姿も。

(左)鈴木其一《牡丹図》、(右)渡辺省亭《牡丹に蝶図》(個人蔵)

江戸時代の《竹垣紅白梅椿図》大胆なトリミングと構図。
竹塀に咲く紅白梅の中を自由に鳥たちが寛ぐ姿が良い。竹垣の中から小鳥たちが遊ぶ姿を探す楽しみもある。

作者不詳《竹垣紅白梅椿図》(【重要美術品】

会場だけでなく帰りも楽しめるのが山種美術館の強さ。
奥村土牛《醍醐》グッズも華やか。

有名な名画で銘菓 見ても美、味わう美の菊家謹製の和菓子

花がテーマでありながら、そばに描かれた小さな生命、蝶や鳥の様子にも注目されるとなお一層楽しめる。

今回の展覧会で出ている酒井鶯蒲や酒井抱一の掛軸大修復や、牡丹図の研究成果、など美術館として公開する以外の本業もきちんと重ねながら、こうした気軽に美術館を愉しめる試みを発信している姿勢は素晴らしい。

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