挿絵本の楽しみ 響き合う文字と絵の世界@静嘉堂文庫

平成29年4月15日〜5月28日

静嘉堂文庫
二子玉川からバスに乗り降りた途端、鶯が見事な鳴き声で迎えてくれた。
坂道を上がると静嘉堂文庫。ここは耀変天目が有名だが、今回は「挿絵本」が迎える。


(今回は主催者の特別な許可を頂き会場風景を紹介する)
主に日本の江戸時代(17〜19世紀半ば)、中国の明・清時代(14世紀後半〜20世紀初め)の本の中から、多彩な挿絵本を絵と文字の関わりを楽しむように誘う。

1.神仏をめぐる挿絵

本邦初公開。
南宋時代の『妙法蓮華経変相図』絵で見るお経
「火宅」など、まさに燃えている家に人いる図など細かく具体的に描いている。

2.辞書・参考書をめぐる挿絵
中国最難関試験である科挙を勉強するための参考書。チャート式っているのかしら。
絵入りの百科事典のよう。

明『三才図会』から江戸『和漢三才図会』へ知識は輸入翻案されていく。
貴重な全巻手描き文字『永楽大典』が静嘉堂文庫には8巻もあり、中国国家プロジェクトに協力するそうだ。美しい文字そして端正な絵。

3.解説する挿絵

カタログでもあり図録でもある。
『機巧図彙』はからくり人形の内部構造など緻密な図版と説明が入る。
本草図譜』岩崎灌園が手掛けたもの。手彩色で赤の鮮やかなこと。1844年模写したものだが活き活きとした本草図である。

4.記録する挿絵

旅行、紀行などを図版を共に残してある事が今はとても貴重な資料となる。
松浦武四郎の『天塩日記』『知床日記』北海道
大槻玄沢『環海異聞』ロシア11年
前川文蔵・酒井貞輝『亜墨新話(初太郎漂流記)』メキシコ、カリフォルニアの見聞録。

5.物語る挿絵

中国の図版入り書籍をこうしてみる機会は珍しいのではないだろうか。明(1610年)の『琵琶記』は木版画で1mmに3本の線を入れるほど精密な技巧。
ここでは物語を彫り込んだ蒔絵螺鈿や蒔絵象嵌の印籠もお披露目される。物語は絵巻や巻本のみならずいつも携帯する印籠などにも着目するとは面白い趣向。
小さな冊子『大しょくはん(大織冠)』の鮮やかな水色。

静嘉堂文庫が持つ江戸期や明清朝の書物は内容も十二分に素晴らしいがこうした「絵」を組み合わせた視点で構成する展覧会というのも興味深い。物語だけでなく解説や記録という意味でも大きなチカラを持つ絵。「知りたい」ニーズに応えるために描かれたという意味は興味深い。

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「挿絵本」はまさに文字と絵が同じ所で支え合って成り立っているものです。それは、その時代の人々の、情報に対する多様な要望が反映されたものといえるでしょう。